ニューノーマル社会では、外交的で社会的役割を希求する傾向が「病的ひきこもり」のリスク因⼦に?(PCN誌オンライン版2024年2月29日掲載)
2024年02月29日
ひきこもり研究ラボ@九州大学では、コロナ禍における病的ひきこもりの危険因⼦を明らかにするため、2019 年6 ⽉時点でひきこもり状況になかった全国の社会⼈561 名を対象に、オンラインによる縦断調査を2020 年6 ⽉から2022 年4 ⽉まで複数回実施しました。
コロナ禍になり、3 割以上の⼈が⼀度は「物理的ひきこもり」状況に陥っていました(図1)。「物理的ひきこもり」と評価された⼈々の中の6 割以上は「⾮病的ひきこもり」と判断されましたが「病的ひきこもり」に陥っている⼈も数割存在していました(図2)。
意外なことに、社交的で、社会的達成動機が⾼く、社会的役割を希求し、外交的で協調性が⾼い⼈こそが、コロナ禍における「病的ひきこもり」の潜在的な危険因⼦として同定されました。こうした因⼦は⼀般的にひきこもりとは関係ない因⼦と想定されていましたが、コロナ禍では逆説的に「病的ひきこもり」の潜在的な危険因⼦になることが⽰唆されました。この結果は、ポストコロナ時代の新しい⽣活様式におけるひきこもり予防や対策を考える上で重要な資料になると思われます。今後、新しい価値観に基づく抜本的なひきこもり⽀援体制の整備が求められます。
こうした結果を筆頭著者のKuan-Lun Huang氏(2023年秋 ひきこもり研究ラボ@九州大学に短期留学していた台湾の若手精神科医)が中心となり論文としてまとめ、日本精神神経学会が発行している「Psychiatry and Clinical Neurosciences (PCN)」オンライン版に2024 年2 ⽉29 ⽇午前10 時(⽇本時間)に掲載されました。